広報用団扇などに印刷されていた今年のサマージャンボ宝くじのキャッチ・コピーをご覧になりましたか?
背景にアテネ、パルテノン神殿の写真を配し、上段に大きく「アテテネ!」このコピーを見た瞬間、最初は今回のジャンボ宝くじには、「アテネ・オリンピック招待」の特別賞でも付いているのかと幻惑されてしまった。
よくよく見れば「アテテネ」でした。座布団一枚ものの傑作コピーだ!
メダルラッシュ
そのアテネでいよいよ陸上競技も始まった。
昨日早朝(午前4時55分)に行われた男子10000m競走には、地元旭化成の大野龍二君(19)が出場した。
今大会、日本選手団は、柔道や水泳競技などでメダルラッシュが続いている。TV放送で別の番組を見ていると、「ニュース速報」と字幕が出て、「スワッ、大事件・大事故か?」と画面を注視すれば、名前を全く知らない水泳の選手が「金メダル獲得・・・」とか流れて、正直驚いている。田舎の地域団体とはいえ陸上競技関係者の一人として、日本水泳連盟の輝きを羨望をもって眺めている。
陸上競技のメダル獲得は?
私が予想するに、我が陸上陣は明日午前零時にスタートする女子、そして30日午前零時にスタートする男子のマラソン、明日午前1時35分(日時はいずれも日本時間)から行われる男子ハンマー投げのいずれかで、誰か一人がいずれかのメダルを獲得することができれば、御の字とみている。
ことほど左様に、わが国の陸上競技のレベルと世界とは、大きくかけ離れている。末次、朝原が出場した100m競走の2次予選でも、1着の選手は最後の組を除いて全て9秒台を叩き出している。これが、準決勝、決勝になれば、半分以上の出場選手が9秒台で走ることになるだろう。
方やわが国では、有史以来100mを9秒台で走った選手は誰一人いない。
(日本記録は、1998.12.13、バンコクで行われたアジア大会で伊東浩司が出した10秒00)
男子10000m
大野龍二君は、昨春鹿児島実業高校から旭化成に入社した若干19歳で、今年の春から急速に力をつけて代表選考会の日本選手権10000mで優勝をかっさらい、宗監督に「シンデレラボーイ」と言わしめた新鋭だ。
だからかも知れない。
一発決勝となったアテネの男子10000m競走では、3000メートル付近まで、彼は堂々と並み居る世界の強豪に伍して先頭集団の一角を占め、果敢に走った。(写真:ヤフースポーツから転載)
これが日本では名の通った先輩選手達であったら、結果が、そして世界との実力差が先に頭に来て自重してしまい、結局「出場してきました。疲れました。」的なレースに終わったかも知れない。
彼のレース運びは、当たって砕けろ的な側面も無くはなかったが、これでよろしい。
得たものは大きいはずだ。今後、3000m過ぎから引き離されてしまった(7700m辺りでは周回遅れとなった。)残りの7000mの差を如何に詰めるか、その大きな壁を彼自身が身をもって体験したことであり、実感を持って課題と出来できたはずだから、彼の今後の競技人生の貴重な糧となるものと大いに期待したい。
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観戦雑感
ちょっと評論家ぽくて気が引けるけれども、このレースを振り返ると、世界の壁の凄さを改めて実感した。
現在の世界と日本の差はどれ程かを再確認すると、男子10000mの世界記録は、長い間エチオピアの「皇帝」(かつてアベベ・ビキラがローマ、東京両オリンピックのマラソンで優勝した頃、エチオピアには、ハイレ・シラシィエという皇帝がいらしたからそう呼ばれるのか? それとも5000、10000で度々世界記録を塗り替え、世界のトラック長距離界に王者として君臨したからか? 命名の理由は知らないが、彼はそう呼ばれている。)ゲブレ・シラシィエが持っていた世界記録を今年の6月8日に、同じエチオピアの新鋭ベケレ(22)が更新した。新記録は、26分20秒31。日本記録は、高岡の27分35秒09。その差はおよそ1分15秒・・・。
ちなみに男子5000bの世界記録は、同じベケレが今年5月31日に更新した12分37秒35。日本記録は、やはり高岡の13分13秒14。知ったかぶりついでに12分37秒というスピードは、どんなものかと言うと、400mトラックを1周60秒台、61秒を切るペースで12周半突っ走ってようやく出せる記録です。
私であれば、最初の1周回の200m辺り、つまり30秒走った所で太ももが引きつり、400m通過の時点で生きていられるか、自信がありません。
見所
閑話休題。
レースはエチオピアの3選手を中心に進んだが、個人的には、見所が3回あったと思う。
まず、4000〜5000の間の揺さぶり。大きな集団を崩すために、その3選手が交代で先頭に立ってペースを上げ、この間の1000mを2分35秒で走った。ここで、大野君は徐々に遅れだしたが、それでも、1000mを2分35秒で走っても、5000mに換算すれば12分55秒。世界記録には届かない。世界記録が如何に凄いか・・・。
しかし、4000m走って急にこんなペースアップに会えば、自己記録が13分台半ばの選手には、後々の大きなダメージになる。
2つ目の見所は、5000mの通過時間。13分50秒87だった。日本人選手にとっても決して高いレベルではない。問題は、ゴールタイムとの引き算である。
優勝したべケレのゴールは、27分05秒10だった。そうすると、彼は、後半の5000〜10000mの5000mを13分14秒で走った計算になる。5000m走った後の残りの5000mを前半の5000より35秒もペースを上げて、5000の日本記録と殆ど変わらないタイムで走った計算だから、ちょっとわが国の選手では、大野君ならずとも歯が立ちませんはナ・・・。
3つ目は、残り450m(9550m)辺りから、べケレが仕掛けた、それまでの彼とは人が変わったようなラストスパート。
日頃「目を見張る。」と言う言葉を使うが、「こんな時のために取っておかなければならないのだ。」と痛感した。それほど凄い急激なペースアップと切れ味だった。べケレは、9600m走ってきて、残りの1周400mを53秒で走った。
53秒ってどんなスピード?
今年の6月13日にマレーシアのイポーで行われたアジア・ジュニア陸上選手権で福島大学の丹野麻美さんが出した女子400mの日本新記録が52秒88です。恐るべしべケレ・・・。
そんな様子を見て、冒頭に我が陸上陣の少なめなメダル獲得予測をしてしまったが、願わくば、室伏君に金メダル、男女のマラソンの各一人にメダル獲得者が現れることを期待したい。それにしても、眠い!
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