今年の4月から、私は、都市建設部土木課に勤務しており、災害対策の最前線に身をおいたため、今回の14号が延岡市を襲った9月5日の夜半から6日以降、同僚の文字通り昼夜を分かたない献身的な仕事振りをつぶさに見て、同じ市職員として可笑しな感想かも知れませんが、敬服しました。
では、土木課の職員は、このような災害の際、どんなことをしたのかを少し紹介させていただきます。
道路冠水、通行止め
まず、台風の強風域や暴風域に入る前に、雨雲が周辺地域に到達して強烈な雨が降り出しますから、市道が冠水します。その地点の道路に、いち早く駆けつけて車や歩行者が知らずにそこを通って被害に遭わないよう「『危険』通行止め」の処置をしなければなりません。
樋門閉鎖
次に、本流の河川の水位がどんどん上昇しますから、河川管理者(国や県)から委託されている、その河川に流れ込んでいる街の水路との合流点に設置された樋門(平たく言えば「水門」)を閉じて、本流から街中へ水が逆流するのを阻止しなければなりません。
堤防越水
普通規模の台風の場合は、そこまでの対応で済むのですが、今回は、例えば同じ宮崎県北部の山間部の町「南郷村」で1300mmを超える記録的な降水があったと報じられたように、山の方で、メチャクチャに雨が降ったため、消防団等の皆さんが水を食い止めようとして堤防上に必死に土嚢を積み上げたにもかかわらず、延岡市街地を貫流する五ヶ瀬川の水が、主にその左岸で越水(堤防を越えること。)しました。
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つまり、多量に降った雨を堤防が受け止め切れず、川から水が市内へ溢れ出しました。
ただし、今回は越水で止まって、堤防決壊(「破堤」という。)に至りませんでしたが、もし堤防が切れていたら、今回の被害の沙汰ではありませんでした。
そして、これ程市街地が浸水したのに、一人の人的被害も出なかったことは、「不幸中の幸い」と言ってよいと思います。
これまで、延岡市の史上、度々水害に会ってきて、先人からその惨状を聞き伝えてきた延岡市民の防災意識の高さが、そうさせたのだと思います。
市街地浸水対策
そうすると、街中に降った雨の水は行き場を失い、更に道路や住宅地、商店、工場が浸水しますので、その対応が出てきます。同時に、本流の外の、所謂「内水」を本流に吐き出す排水機場(排水ポンプ)の運用にも当たらなければなりません。堤防の内側に溜まった雨水を本流ヘ汲みだすのです。
しかし、本流の水位が上昇しているのに、下手に「内水」をこのポンプでどんどん汲み出せば、本流の下流域で本流が氾濫する恐れがあります。判断を誤れば、上流域の被害はさ程でもなかったのに、下流では大浸水被害、ともなりかねず、その調整が悩みです。
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結果は悲惨な状況で、災害復旧の対応方針を決めるため、宮崎県知事や市長、また8日には、政府の村田防災担当大臣を団長とする政府の合同調査団27名が、自衛隊の大型ヘリに乗って来延され、現場を視察された際に私も同行したり、自分自身が気に掛かる箇所を単独で見た折にも、その浸水被害の惨状をカメラに記録すことが、はばかられました。
台風が過ぎ去って、殆ど寝ていず、一息ついてと言いたい所ですが、被災者の皆さんから、「自宅前の市道が陥没している。ヘドロ、流木やゴミが押し寄せて自宅の扉が開かない。」など諸々の苦情、相談があり、同僚がその対応をしていると、次は、「乾燥したヘドロが風に飛ばされて凄いホコリです。なんとかしてほしい。」という要望が来ました。
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これと合わせて、衛生状態の悪化も懸念され、今日は、乾いたヘドロの飛散防止のための散水車のタンクの水に消毒薬を混ぜて、浸水地区の市道沿線に散水しました。
まだまだ、被災された市民の皆さんからの相談や要望の対応に追われそうですが、実際、自宅が1階天井まで浸水し、「市の避難勧告、避難指示に早く従っておけばよかった。逃げ遅れて自宅に留まり、道路側のシャッターに流木がドスン・ドスンとぶつかる度に、本当に怖かった。」と仰る、家中がメチャクチャになって呆然としていらっしゃる被災者の姿に接すると、災害復旧はこれから、と実感せざるを得ません。
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