青艸(佐藤理洋)の
身勝手「野鳥歳時記」

発 行:ひょうすぼ社
発行人:佐藤理洋
住所:
北緯32度32分29秒 東経131度40分39秒
e-mail:
riyoyoko@hotmail.com
創刊:2000年11月創刊

ご意見・感想等は発行人までお願いします。(^_^)  

青艸(佐藤理洋)の身勝手 野鳥歳時記(67)(2006年1月14日)

◆高橋尚子、復活◆

 昨年の11月20日(だったと思う。)に開催された、東京国際女子マラソンで高橋尚子選手が、見事な復活を遂げた。

 私は、願いが叶うことならば、野口みずき、高橋尚子の両オリンピック金メダリストに加えて、その時最も旬な新人選手の三人トリオで北京に臨み、そのうちの誰かが優勝して、日本女子マラソン、オリンピック三連覇の偉業を達成して欲しいと、陸上競技関係者の一人として願っている。

 実は、その11月20日を私は心待ちにしていた。高橋のカムバックをではない。

 BSで「開高健の釣り紀行」二編が再放送されると聴いていたからだ。取り分け、開高が元英国首相ヒューム卿を訪ねて、スコットランドで初体験の毛ばり釣りをした番組を是非もう一度見たいと願っていた。
 もっと正確に言えば、番組全体というより、その最後の方に収録されている、「あの場面」をもう一度見たいと痛切に願っていた。

 蛍の光:The light of a lightning bug(青艸訳)

 その場面とは、スコットランドの川ではまったく釣れず、それでも、その釣行企画の最初から開高が企んでいた、「スコットランドでスコットランド民謡の『蛍の光』」を歌うという場面だった。

 「蛍の光」は、かつてわが国の義務教育下の諸学校において、卒業式では「仰げば尊し」と共に、必ずと言っていいほど歌われた曲であったことは、読者の皆さんは良くご存知ですよネ。

 私が学んだ中学校1年生の英語の教科書の裏表紙に、その「蛍の光」の英語の歌詞を刻んだ譜面が掲載されていて、「歌詞は、英語の古語」と注釈が付けられていた記憶がある。

 しかし、開高の数々の釣り紀行に同行したカメラマン、高橋昇の近著「旅人 開高健」(2005年6月初版、釣り人社)にもあるように、原曲の歌詞は、スコットランドの国民的詩人、ロバート・バーンズが、英語ではなくゲール語(かつてスコットランドで主要語だったケルト語の内のひとつ。)で書いたものであるようだ。

 そして、その歌詞の趣旨は、「蛍の光」のように「お別れ」の曲ではなく、「古い懐かしい友人を偲ぶ歌」であるらしい。

 そのことを解説したホームページ「海外旅行お助け手帳」にゲール語の歌詞が掲載されていた。以下のとおり。また、「お助け手帳」のURLは、
http://home.ktroad.jp/
kazumi-t/index.html です。

-Auld Lang Syne-

Should auld acquaintance be forgot,
And never brought to mind?
Should auld acquaintance be forgot,
And days of auld lang syne!

(Chorus)

For auld lang syne, my dear,
For auld lang syne,
We'll tak a cup o' kindness yet,
For auld lang syne.
And surely ye'll be your pint stowp,
And surely I'll be mine!
And we'll tak a cup o' kindness yet,
For auld lang syne.































(Chorus)

We twa hae run about the braes;
And pou'd the gowans fine;
But we've wander'd mony a weary fit
Sin' auld lang syne.

(Chorus)

We twa hae paidl'd in the burn,
Frae morning sun till dine;
But seas between us braid hae roar'd
Sin' auld lang syne.

(Chorus)

And there's a hand, my trusty fere!
And gie's a hand o' thine!
And we'll tak a right gude-willie waught,
For auld lang syne.

(Chorus)

-Robert Burns-

 

開高、パブで歌う

 私が、どうしても、もう一度見たかったTVの場面のことを先述のカメラマン高橋は、以下のように書いている。

 スコットランドのネス湖のすぐ傍らにインバネスという街があって、その街の(「フェニックス」という名前の)パブで先生(開高のこと、青艸加筆。)が「蛍の光」を歌うということになっていた。
 それも英語ではなくてゲール語でである。 「シュッドーダァ、クエンタンス、ビーフォゴッド、エンドネバー」

 スコットランドの詩人、ロバート・バーンズの作品であり、その国の誰もが知っている曲を日本人が歌い始めたから、さあ大変、地元の呑み助たち(老人も若者も、男も女も)もいっしょになっての大合唱になり、文字通りのドンチャン騒ぎになってしまった。

 この大合唱の後、開高は「歌詞を憶えていた。1行だけ忘れていたけれど・・・。」とインタビューに答えていた。その画面を見ながら、涙が出てきた。

 そして、その場面を見て私は満足し、一度見たことのある思い出の画面しか見ることはできず、新しい画面は生まれないのだと改めて納得して、やはり開高は死んだのだと合点して、深く沈静した。

Should auld acquaintance be forgot

 2006年1月2日、宮崎県立延岡高校第3回卒、卒業35周年記念同窓会を開いた。我々旧3年4組49人からは8名(全クラス406名から41名)の参加であった。写真(↓)

会の冒頭、18名の物故者へ黙祷を奉げた。

 古き良き友人達は、忘れられべからざる人々であるに違いない。

 

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