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発 行:ひょうすぼ社 |
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乱杭99号を各位にお送りしたら、トップ記事に掲載させていただいた伊丹の安田さんからメールが届いた。こんな反応があるから、個人紙(今はメール)は止められない。 「家内は、『サシバの数などいい加減なもんやわ、だって鳥はしょっちゅう動いているし、すがたも色もほとんど同じやし、
正確に数える事なんかできへんわ』と言っています。実は私もかなり同感です。これに対する明快な答えは
如何でしょうか?なるほどと言う答えを期待しています。」とのこと。以下は、私の返信です。 答1:この時期のサシバは南(台湾からフィリピン諸島、東南アジア)で越冬するため、ひたすら南を目指して飛びます。私の住んでいる延岡近辺は、主に本州から四国を経て九州に到達するものの着岸点となっており、天候や風向きで、その地点が変化するため、ある1地点で全体を捕そくすることは不可能です。しかし、更に南の都城市金御岳は、日本本土最後の離岸地点である鹿児島県佐多岬への収束通過点となっており、ここに、カウンターネットを張っておくことで、日本本土の生息数の大半を掴むことができます。 さて、質問の『核心』の「動いている鳥をどうやって数えるか」、というお尋ねです。 サシバの渡り行動は、大きく分けると『上昇』と『滑空』に分けられます。長い渡りの間、体力を消耗しないよう、平野部に突き出た山や、海辺の岬など、上昇気流が起こりやすい所で、そこの風を捉えて高く上がり、後は北風に乗って『滑空』して
南下の距離を稼ぎます。『滑空』の時は、羽を大きく広げて、まるで編隊飛行のように、数列になって一定方向に流れて行きますので、漏らさないよう、編隊の幅を見ながら、先頭から順に「カウンター」で数えます。 さて、うじゃうじゃの群れも、じっとはしていない訳で、どうカウントするかと言うと、彼らの上昇にも限度があり、一定の高度を得て、行くべき方向を定めると、一羽、また一羽と、そのうじゃうじゃから離れだすのです。それを逃さず、カウントします。 答2:「姿も色も他の鳥とは、まったく違う」としか言いようがありません。ただし、正直に申し上げますと、10月9日の観察会で、私は、サシバとカラスを誤認して、皆さんの失笑をかったことを白状します。 答3:仰せのとおり。そもそも、『正確』とは何ぞや?「正しく確かなこと。」? 7〜8年前に出席した、ある工業技術関係の講演会で、講師の先生が『皆さんは、デジタル技術は、いかにも正確な技術とお考えでしょう。しかし、いかに、いい加減な技術であるか、私が証明して見せます。』とおっしゃり、しばらく黙られました。 その間に、午後何時かを迎えたところ、会場の出席者のデジタル腕時計が、正に各個バラバラ、好き勝手に、「ピピッ、ピピッ」、しばらく間を置いて、また
「ピッ。」「ピッ。」と時報の音を出したのです。正確無比のはずのデジタル技術神話の破綻の一瞬でした。 ましてや、太古以来の一定の自然の摂理に従いながら、(且つ、人間の見た目では)好き勝手にあっちをフラフラ・こっちをフラフラしている、たった1種の鳥の正確な絶対数など、捕えられることは出来るわけがありません。あくまでも、『これだけの数は確認した。』に止まるものと考えます。
No.100 乱杭(2000年10月17日)
マクランサとは何?の質問に当該の会社から回答をいただきました。「日本原産種の野生ランの代表的品種である『敦盛草』の学名”Cypripedium
macranthum”から引用しております。」とのことでした。やっぱりランか、こりゃ!わかラン・・・。
次に『上昇』は、これは、現場を見ていただかないと、とても説明しづらいのですが、10月初旬から下旬にかけて、当地で一羽だけが上昇することは稀です。一羽が上昇を始めたと思ったら、後から後から後続が続き、掛け値なしに『ウンカ』のごとく、うじゃうじゃと舞い上がりだします。「なんで、そこまでくるまでにわからへんの」と言われそうですが、遠くのサシバは扁平なため、人には見えないのです。
結局、正確なはずのその技術も、使い手の人間によるのだよ、と言う警鐘です。ことほど左様に、正確と言うものは、実在しないように思われます。