発 行:ひょうすぼ社
発行人:佐藤理洋
e-mail:
riyo@ma.wainet.ne.jp
創刊:昭和60年(1985年)6月15日

ご意見・感想等は発行人までお願いします。(^_^)  

 乱杭 121号(2001年7月1日)
◆情けは人のためならず◆

 6月13日付けの朝日新聞に、「文化庁は、今年1月に全国の男女3000人を対象に実施した『国語に関する世論調査』の結果を発表した。」と報じ、その一部として、「情けは人のためならず」の意味を過半数が取り違え、「人に情けをかけて助けてやることは、結局その人のためにならない」という誤用が48.7%で、本来の意味である「人への情けは結局自分のためになる」の47.2%を上回った、と紹介していた。

 共働きの両親に代わって生後から高校卒業の年まで、ほんの一時期を除いてずっと一緒に暮らし、私を育ててくれた祖母紙田ツエは、宮崎県日向市細島の商家に生まれ、88歳で亡くなったが、その生まれ育った細島に伝わる諺(ことわざ)を折に付け私に話してくれた。

 その中に、今でも忘れない「やっちょきゃ貰える彼岸のダゴ」というユニークなものがあった。宮崎県北部地方以外にお住まいの方々のために標準語に直すと、「差し上げておけば、(何時かは)お返しがあるのが、お彼岸のお団子だ。」

 この諺を私に話した後、祖母ツエは、必ず「意味が分かるか? 世間には古い諺で『情けは人のためならず』と言うものがあり、人様に対する情けは、何時か自分に返ってくるのだから、おろそかにしてはいけない。お彼岸の団子も、自家で作った時には、他家にお裾分けをしておくと、そこから何時かお返しの団子が届くよ、といって人様にかける情けの大切さを教えた言葉だよ。」と付け加えたものである。

 そう話してくれた時の祖母の表情には、決して嫌味ではないが「功利的」でかつ「慈愛」に満ちた笑みがかすかに漂っていたことまでよく憶えている。
 従って、先の「世論調査」が私に来れば、ぴたりと正解を答えたのに、と残念でならない。

 さて、このようにして幼かった私に祖母が教えてくれた言葉「情けは人のためならず」の出典は何か、読者はご存知でしょうか?


















 1998(平成10)年6月5日に、国立能楽堂(日本芸術文化振興会)の肝いりで延岡総合文化センターにおいて開催された「のべおか天下一能」(毎年10月には、延岡城山城址で「天下一薪能」が開催されているが、これとは別の劇場内の能会。)で「能『葵上』が、ツレ観世暁夫、シテ山本順之、ワキ宝生 閑ほかで上演された。 その日は、日頃お世話になっている女性二人、一人は先の紙田ツエの長女、つまり私の母と、日本舞踊「山村流」の名取りでこの「乱杭」にも時々登場する延岡市南町「おでん小よう」の女将を左右に従え観能した。
Here's a cool technique! 今をときめく野村萬斎がアドをつとめた狂言「佐渡狐」の次に、くだんの「葵上」は上演されたが、左写真の能会パンフレットには、この能の詞章(台詞)が掲載されていて、これを見ながら能を楽しめるよう工夫が凝らされていた。

 物語は、皆さんご存知のとおり、光源氏に捨てられた六条御息所が、源氏の正室葵上に嫉妬して亡霊となりとりつく物語だが、巫女がその(六条の)亡霊に、とりついた訳を尋ねるたところ、「恨みを晴らさんとて これまで現れ出でたるなり」と訳を語って聞かせる場面で、亡霊に続いて能のバックコーラス「地謡方」が、「思い知らずや世の中の情けは人の為ならず 我人の為つらければ。々 必ず身にも報うなり。」と謡うのです。

 その場面で、はっと隣の母を見ると、母もわかった様子で私を見上げました。何とも偶然に「やちょきゃもらえる彼岸のダゴ」の古い古い語源に行き当たったのでした。


◆遠近両用メガネ◆

 昨日、今日と延岡市西階 (にししな)陸上競技場で、第47回全日本中学通信陸上競技大会宮崎大会が開催された。いつものように2日間、その競技会のアナウンサーを務めた。
 大会第2日目の今日、競技が開始される午前9時前に、例によって一発かましてやった。実は、昨日第1日目の最後の種目男子3000m競走で大会新記録、全国大会出場標準記録突破のよいニュースがあり、第2日の競技に弾みをつけようと余計なおしゃべりをしたのだ。以下、私が「かました」お話。

 「昔話が多くなると歳をとった証拠だ、と言われますが、少し昔話をいたします。私が中学生だった頃、この大会は『全日本中学放送陸上』と呼ばれ、NHKのラジオ放送に乗せて、1日だけの競技日程で行われていました。最初の競技は、午前9時丁度に、全国一斉にスタートする男子の3000m競走でした。現在は2日間の日程となり、この3000m競走は、昨日の第1日最後の競技として行われ、大会新記録、全国大会参加標準記録突破が生まれました。第2日目の競技に参加される宮崎県内中学生アスリートの皆さん。今日の皆さんのご健闘を祈ります。」

 スタンドで笑いと一寸した驚きの声があがり、「やったね!大成功。」とかってにウケに気をよくして、今日も1日、楽しく陸上競技審判員のボランティアをやってきました。

 この「楽しく」には、もうひとつ理由があって、乱杭No.119で書いた「遠近両用メガネ」がようやく出来上がり、そのデビュー戦でもあったのです。

















このメガネを調製していただいた延岡市中央通りの「金子メガネ」さんによると、「佐藤さんはキツイ近視なので、レンズの上辺から下辺までで度数を遠方から近場まで逓減させても、普通の人のように−から+にはならず、−から−ですから、それほど抵抗はないでしょう。」と言われましたが、誠にそのとおり、具合がいいたらありゃしない。

 ただし、レンズの度数逓減処理は、正確に縦方向に行われているため、正面を向いて左(若しくは右)下への流し目、というのはダメで、見たい対象(アナウンサーをする時は、グラウンドの選手と手元の出場者リスト)と正対し、上・下の連係で見なければ、ゆがんで見えて、遠近両用メガネの効果がほぼ皆無となることが分かりました。

 いずれにしろ、とても便利な道具を手に入れた気分ですが、これが高いのです。

 遠近両用の特殊処理のレンズだけで、従来の近場用、遠方用メガネの全体の値段を上回ります。寝たきりなど介護を要するようになったら、それなりにとは自覚意がありますが、このように中高年になると、金がかかると言うことまでは、思い及びませんでした。困ったことです。

Here's a cool technique!左写真下段の上から、従来使用の近場用、遠方用、そして今回調製した遠近両用です。後ろの「こうし模様」の微妙な違いがご覧いただけるでしょうか?

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